論文試験における「心証点」!(その1)
弁理士試験受験生の方は、
論文試験における「心証点」!
気になりますよね。
論文試験の採点は、感情を持った人間が行う以上、
心証点に優劣がつくのは当たり前の話です。
私も、答案添削をしていて、
同じ内容が書かれている答案でも、
心証点の優劣により、点数に差を出すことはあります。
ひよこ丸さんのブログにも書かれていましたが、
私の受験時代から、論文はラブレターを書くように丁寧に書きなさい、
と言われたものでした。
この表現は、非常に抽象的であり、
いろいろな解釈の余地があります。
残念ながら、
人間の感情や趣味が多少入るため、
一義的に定義することはできないと思います。
そこで、私が答案添削で心証点を低くしている具体例を挙げてみます。
先ず、
①根拠条文に基づいて説明していない。
添削していて、条文のことを一応理解されている点は伝わりますが、
条文が一度も、あるいはほとんど挙げられていない答案は、×にしています。
弁理士試験は、条文を問う試験であるため、条文を用いて解決する必要があるからです。自分が説明している部分は、どの条文に根拠があるのかということを添削者に示す必要があります。逆に、この条文があるので、事例をこのように考えました、という感じが伝われば、私もニコニコしながら◎を付けています。
特に、論点問題や複雑な事例問題の場合に、根拠条文が抜けがちです。
多分、頭がパニックになり、自信の無さから根拠のないことを感覚で書いているのでしょう。どの条文が問われているかを気付く感覚は必要ですが、説明も根拠条文に基づく必要があります。添削者は、当然ながら受験生の頭の中を知り得ません。ならば、受験生が勉強してきた内容を、答案用紙上に客観的に示す必要があります。
この意味では、たかだか、「根拠条文」と軽視していると、痛い目にあいます。
②問われている内容が項目として挙がっていない。
当たり前ですが、問題文には問われている内容があります。
例えば、「取り得る措置を説明せよ」という問題では、取り得る措置が問われています。
この問われている内容は、答案のどこかで説明するだけでは、添削者にアピールできません。問われている措置は、項目として積極的に挙げるべきだと思います。問われている内容が項目として挙げられていれば、添削する側も、題意が把握できていると判断して、◎を付けるわけです。しかし、項目に別の内容が挙げられており、目立たない所に問われている措置が挙げられている答案の心証点は、よくありません。心証点の加点無しだけでは済まず、題意把握ミスと捉えられるかもしれません。
また、項目に条文だけを挙げるのも、あまり感心しません。やはり条文上の用語を用いて説明するべきだと思います。特104条の3のような条文番号に意味のある項目もありますが、その場合でも、特104条の3の主張(抗弁)、というように表現すべきです。この意味で、「クレーム」という表現も個人的には、×にしています。勿論、苦情の「クレーム」とは混同しませんが、条文に用いられている表現(この場合、特許請求の範囲)を使うのが原則であり、根拠にもなります。時間が限られている中、漢字で書くのは面倒ですが、試験ですので、がんばって欲しいものです。
なお、問われていない内容を挙げている場合であっても、以下の内容は特に注意です。
例えば、問題文に「訴訟上における主張」が問われていたとします。
このとき場面は、裁判所での裁判になります。
このようなときに、特許庁に対する手続き(例えば、侵害訴訟であれば、無効審判の請求)を項目として挙げると、題意把握ミスになります。無効審判を請求して、訴訟の中止の申し立てを意図していることも、薄々、解りますが、やはり×になります。このケースだと、訴訟中止申し立て(特168条)と項目に表現すべきでした。
この意味で、本試験では、何が問われているのかをよく考える必要があります。
以上の2点は、ヘビー級クラスのミスだと思います。
心証点を、神経質になる必要はありませんが、
やはり、同じ内容を書くのであれば、少しでも点数欲しいですよね。
一度、心証点のことを真剣に考えてみるのも、面白いかも知れません。
他にも、ミドル級クラスのミス、ライト級クラスのミス、がありますが、
次回にアップさせて頂きます。
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