特許になるか否かの結論は、
審査官の直感ですでに結論が決定されており、
その結論に至る過程に、特許法に規定された拒絶理由を用いているに過ぎません。
先行技術文献と同一のものを出願すれば、拒絶されます。
これは、新規性違反という理由ですが、先行技術と同一のものに独占排他権を付与することはできないからです。
これはその通りだと思います。
問題は、進歩性違反の場合。
先行発明から当業者が容易に創作できるものは、同様にして、権利になりません。
ところで、「当業者が容易に創作できる」とは、誰が決定するのか?
はじめて特許出願した人は、いかにも意味不明で、よくわからないことですね。
具体的に線引きが法律や審査基準で規定されているわけでもありません。
特許審査および査定は、特許庁審査官に権限があります。
では、どうやって拒絶するのかというと、
これは、将来、特許になった場合に、権利範囲があまりにも広くなるケースでは、
先行技術の有無にかかわらず、審査官に拒絶しようとするバイアスが働きます。
例えば、同一の先行技術文献が発見されず、誰もそのような技術的思想を見出していない場合でも、
発明の内容を、バラバラにして
この部分は、あちらの文献に記載され、
あの部分は、こちらの文献に記載され、
という感じで、
これらの文献を全て適用すると、容易に創作ができたとして、
拒絶されてしまいます。
特許権の範囲(法律用語ではありませんが)がかなり広くなる場合、
先行技術文献があるから拒絶されるわけではなく、
発明の範囲が広いから拒絶されるわけです。
そして、その理由に、新規性違反や進歩性違反を用いているに過ぎません。
これを弁理士試験の答案に書くと、×をもらいますが…。
広い発明に権利を付与できないわけです。
拒絶査定は、特許法49条に規定されていますが、
これは、特許法1条の法目的を実現するための規定です。
審査官の頭の中では、特許法1条を考えているわけですね。
特許法1条の中に「公の利益とのバランスを図る」という当然解釈もあるように考えられます。
権利があまりにも広いと、やはり、
「公の利益とのバランス」が崩れるわけですので、
先ず、かなり広い特許権の範囲をみて、拒絶という結論が導かれ、
それをあたかも当然のように、しかし強引に、先行技術文献を用いて、平然と拒絶されます。
ですので、審査官のいうとおりに素直に従っていると、
狭い権利になってしまうことが多いのです。
ところが、審査官も強引に拒絶しようとすると、
拒絶理由に導くための論理づけにどうしても穴が出てきます。
我々弁理士は、その点をついて反論するわけですね。
特許法29条2項の進歩性、
当業者が容易に創作できる、というよくわからない文言があるのは、
審査官側の判断を助けます。
しかし、特許法29条2項にも筋が必要ですので、
その筋を逆にうまく利用した反論をするか否かで、権利範囲も大きく変わってきます。
そのような反論できますか???
そのような反論しても、
審査官レベルで特許査定にならないケースは、
やはり、その上の審判官レベルにあげる必要があります。
費用がかかりますが、現在の法律では仕方がない。
ある程度の費用は割り切らないと、
特許証を額縁に飾るだけのゴミ特許になることもあります。
一般論ですが、
なんでもかんでも、権利範囲を狭くして、早期に特許査定にしていく弁理士もいると思います。
早期に特許査定で終わることは重要ですし、審判段階までいってクライアントに費用の負担をかけたくないからです。
中には、成功謝金を狙う人もいるかもしれません。
しかし、どのような権利範囲の特許になるのかの方が、はるかに重要です。
現在の特許審査は、4~5年前よりも、特許になりやすいですが、
それでも、広くて有効な特許は、特許庁との間で、勝ち抜いたものしか手にできないといっても過言ではありません。
弁理士は、これらのことをクライアントにしっかり説明して理解を得、審査官との対応では感情的にならず、冷静に対応していく実務力、いや人間力が必要なのです。
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