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2020年5月14日 (木)

知財クラッシュ!

今年に入って早くも5月中旬。

今年はどれくらいの件数の知財が日本国特許庁に出願されているのだろうか。


特許出願と商標出願については最近出願する機会がないためネット情報に頼ると、軒並み減少どころではなく、激減しているようだ。

商標出願の件数は今後も維持か、若干の減少程度かと思っていれば、激減ということでびっくり。


そして、知財最後の砦の意匠出願。

意匠出願は、今週、幸運にも出願する機会に恵まれた。

5月中旬で9000番台。1か月で2000件弱の意匠出願という計算だ。

意匠出願件数は年間で約3万件弱と記憶していたので、このペースでいくと2万4千件程度。

こちらも激減している。

特許、商標、意匠が軒並み激減とくれば、知財クラッシュもいいところだ。


特許事務所の経営者(もちろん私を含む)にとっては、コロナ・ショックに匹敵する緊急事態なのだ。


ただ権利者側から見れば、良い面もある。

先ず、知財の権利範囲。

特に商標権や意匠権については、類似とされるような他の商標や意匠が少なければ、類似範囲の認定において広くなる傾向がある。

商標や意匠は、同一のものだけではなく、その類似範囲までの領域について排他権が認められる権利である。当然類似とされる領域に他の権利がなければ、自宅の庭を広く設定するように、どうしても権利範囲を広く認定することになる。登録意匠の類似範囲については、先行登録意匠の存在次第で意匠の要部が認定されることもあるため、特に顕著であろう。


一方、特許権について。

特許権には類似範囲というものがない。そのかわり均等侵害の要件に該当するか否かで技術的範囲を広げるようなことはできるが、それよりも課題の認定を多少甘く、上位概念で捉え、その裏返しとする作用効果を主張すれば、その間に位置する発明の技術思想の幅も広く概念化できる。特許の場合、発明の技術思想の本質を見極めることが何よりも重要である。類似技術がたくさんあれば、特許性(進歩性)を抽出するために、課題を細かく設定しなければならないが、その裏返しの作用効果も細かく主張することになるから、結局、発明の構成(幅)も限定されたものになる。これでは、価値ある特許とはいえない。

特許権に類似範囲という概念は馴染まず、技術思想の差異で判断することになる。発明の構成や作用効果という単位ではなく、発明の課題の認定から始め、その課題を解決する具体的手段の把握がとても重要なのだ。

表現を替えると、技術思想というのは独特の「顔」をもつ。技術思想の「軸」や「幹」ともいう。この軸に沿っていれば、すなわち技術思想の顔と同じ方向・顔つきのものは、均等侵害として認定される確率も高くなるというのが、私の持論である。

誤解を恐れずに言うと、裁判官は技術思想の顔の種類で侵害の有無の心証を抱き、均等侵害の5要件でそれを正当化していく。

したがって、技術思想の軸から偏移した位置にあるような、似て非なる類似技術は、たとえ偏移している距離が僅かであっても、特許発明の技術的範囲の外側と認定される。

特許出願の件数が少ないとすれば、技術分野の偏りはあるにせよ、課題を広く認定することが正論といえる。課題を広く認定するためには、従来技術の技術思想の認定を正確に見極めることに他ならない。

この結果、広くて強い価値ある特許が生まれるのだ。


知財の出願件数、ひいては成立件数が少なくなったいまこそ、実は知財に投資する最適なタイミングといえそうだ。

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