世界的企業のユニクロと名が知られていない中小企業の特許訴訟。
本当は、裁判に係属する前に交渉で片づけることが理想なのですが、なかなかうまくいかないのがビジネスです。
代理人費用が年間3000万円。
中小企業にとってはとても痛い出費です。
超大手企業対中小企業の特許訴訟の構図は、下町ロケットなどのドラマで演出されているが、そんな華やかなものでもない。
中小企業にとっては死活問題につながることもある危険な賭け事ともいえる。
特許無効審判で請求項1が無効という判断がなされたということは、特許権者にとっては極めて不利だ。
特許発明の技術的範囲の属否は、請求項に記載された文言をすべて被告製品が備えるか否か。
通常は文言通りに侵害することはなく、解釈によることが多いが、その解釈に際し、無効となった証拠(従来技術)の解釈も影響してくるのだ。
つまり技術思想論という広い考え方が通用しなくなり、当然に解釈の幅は狭くなるのが通常と考える。
そうなると、被告製品が文言侵害のど真ん中で充足していなければならず、特許権者にとっては立証がとても難しくなる。
この訴訟は注目しているため、外部から静観しておきたいが、ひとつの懸念事項がある。
それは原告とその代理人の信頼関係である。
勝訴すればよいが、仮に敗訴となれば多額の裁判費用と膨大な時間・労力が無駄になると考える特許権者は多いであろう。
勉強代にしても高すぎる額。
一般論であるが、特許訴訟も、地裁の判決が高裁で覆る確率は、それほど高くない。
それでも高裁に進むとなれば、弁準期日を引き延ばすだろうから、さらに1年~2年の時間が優にかかるだろう。
結局、高裁の判決まで4~5年の時間がかかることにもなりかねない。
この訴訟を予想すると、一審で原告が勝てば、相手方のユニクロは当然控訴して泥沼化する。
一審で原告が敗訴すれば、訴訟費用の関係で、そこで終わらざるを得ないだろう。
だから、結局は和解になるのであるが、
ユニクロが侵害しているという裁判所の心証のもとで和解を迎えるのか、非侵害という心証で和解を迎えるのか、180度、見える世界が違うのだ。
非侵害という心証なら、原告が実質敗訴になるのだから、ヤルタ会談を強いられる。
相手が条件を決め、その条件で和解をした方が良いか否かを悩むことになる。
和解の条件を飲めなければ、和解を断念して、控訴しなければ一審判決が確定する。
あとは無効審判あるいはその審決取消訴訟が独りで走っている状況になるから、それをどう終わらせるか。
相手方は、権利が存続していればいつ何時、権利行使されるかわからないので、予算をかけても最後まで戦うはずだ。
いろいろ難しい決断を強いられることになる。
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